2018(平成30年)年11月発売の弊社編集・執筆協力書籍

 

西部警察 SUPER LOCATION 10

日本全国縦断ロケ「大門死す!」

岡山 犬島編
SUPER LOCA 10
「西部警察 SUPER LOCATION 10」をアマゾンで見る

2018年11月21日(水)発売

出版社・青志社

  元日産自動車会長、カルロス・ゴーン容疑者の動向が連日、当事者である日本・フランスをはじめ国際社会をにぎわせて久しいが、筆者的にはどうしてもイメージが『西部警察』にフィードバックしてならない。

 1979年10月14日からテレビ朝日系の毎週日曜日夜8時から約1時間、’84年10月22日まで約5年もの長きにわたって放送された刑事ドラマ『西部警察』シリーズ(PART-I~IIIまで)は、日活出身の映画スター・石原裕次郎が初代社長を務めた石原プロモーションが製作し、その裕次郎・渡哲也主演で、舘ひろし、寺尾聰、峰竜太、石原良純、苅谷俊介ら名優を輩出。同時に三浦友和、柴俊夫、藤岡重慶、小林昭二、古手川祐子、吉行和子ら人気俳優を招いて大ヒットした。当初は勧善懲悪ながら凝った設定とストーリー、名優たちが演じるユニークなキャラクター性が話題を呼んだが、第1・2話に登場したオーダーメイドの(!)装甲車レディバードに代表される“コンクリート・ウェスタン”と銘打ったド派手なアクションに注目が集まるようになり、他局・他社製作ではあり得ないカーアクション・カーチェイス・爆破・炎上・銃撃戦がブラウン管を通じてお茶の間に届けられるようになった。それを可能にしたのが日本有数の自動車メーカー・日産自動車グループのスポンサー力と協賛だったわけだが、その日産が大きく揺れ動いているのがなんとも感慨深い。日本の高度経済成長を支えたのが造船業と自動車産業であるのは国民なら周知の事実だろうが、戦後二度目の東京オリンピックを目前に控えてのこの騒動は、平成から新元号に交替する節目の事件ということもあって我が国の“何か”を象徴しているように思えてならない。

 本書「西部警察 SUPER LOCATION 10」は『PART-III』を迎えた『西部警察』の集大成、3時間スペシャルで送ったシリーズ3作の大団円 = 最終回を秘蔵スチールと文章で紹介した写真集ムックである。「大門死す!」と副題にあるように大門圭介団長が殉職して終幕を迎えた次第だが、この最終回、有終の美を飾るにふさわしく当時の日本のドラマとしては珍しくフランス・パリでロケーション撮影も行っている。インターポールの研修に参加した大門の出張先がフランス……という設定だったが、ここで大門は国際的テロリスト・ホークアイ = 鷹の目の首謀者、ガストン・レグレスの凄絶な最期を見届ける。そのレグレスの後継者として登場したのが日本人のテロリスト・藤崎礼次だった。この藤崎を演じたのが鉄ちゃん(鉄道ファン)としても有名な名優・原田芳雄で、大門と藤崎の対決はテレビどころか映画もかくやという大迫力で我々視聴者に迫ってくる。ここで話が冒頭に戻る。“フランスの怨みを日本で晴らす”というこの最終回の設定骨子が今回のカルロス・ゴーン問題に被ってならないのだ。フランスを拠点に活動していたテロ組織が日本の大企業を乗っ取り、ひいては日本国そのものをも意のままに操ろうと企み、それを阻止せんとした日本警察の大門団長と相討ちをもって最期を迎える――というストーリーに予言性まで感じてしまう……のは単に筆者の“考え過ぎ”でしかない。

 筆者は政治事情に疎いし興味もないが、数ある報道に野次馬的に目と耳を傾ければ、一部に“フランス政府がカルロス・ゴーンを通じて日産自動車を自国のルノーに吸収合併(もっと言ってしまえば乗っ取り)させようとしたのでは?”という説も目に留まる。もちろん私如き侏儒に真相など分かる由もない。

 今を去ること約34年前にフランスで銃殺されたガストン・レグレスと日本で射殺された藤崎礼次の“呪い”なのでは!?……と、ここまで来ると完全に筆者の妄想の世界。だが、『西部警察』で描かれた事件や事象の数々が21世紀の日本で続々と現実化している昨今をかえりみるにつれ、改めて“高度な作品”というものが持つ黙示録性を痛感してならない。

(文責・岩佐陽一)